しこりの放置は要注意
先日、時間外の予約で来院されたOさん。
・おっぱいにしこりができたが、
以前も自然にとれたので２週間ほど様子をみていた。
・しこりは改善せず、発熱し、痛みも強くなったため産婦人科を受診し
マッサージを受けて抗生剤や解熱剤の処方をしてもらった。
・２回ほどマッサージに通ったが改善せず。
・授乳の姿勢が悪いのか？どうしたら治るのか？と当院受診。
→この時点でしこりができてから３週間ほど経過していました。
授乳中にできるしこりはたいていの場合
授乳間隔が空いたり、授乳の姿勢が不適切で乳汁がたまることで起こります。
たまってしまった乳汁は
水分が吸収されていき、残った脂質やカルシウムなどの成分が
かたまりとして乳腺に残ります。
かたまりが乳腺にふたをして、行き場をなくした乳汁がしこりになります。
しこりになる前兆として、
おっぱいがチクチクと痛いといわれる方もいます。
頻回授乳をする、搾乳する、マッサージを受けることで
詰まりがとれて、しこりは解消されていきます。
しこりができてから時間がたつと
その部分が赤くなり、痛みが強くなり、熱が出たりします。
炎症症状がでてくると
「うっ滞性乳腺炎」になります。
この場合も、授乳や搾乳で母乳をできるだけ出して
マッサージを受けるといいのですが
それでも改善しないと
「化膿性乳腺炎」に移行していきます。
炎症が長期化すると、菌と戦ったあとの残骸が膿になり
しこりのところに蓄積していくのです。
その範囲が広くなるほど
授乳やマッサージで膿はとれず
乳腺外科でおっぱいを切開して排膿しなければいけません。
Oさんのおっぱいを見た瞬間、
「明日朝イチで乳腺外科へ行ってください」と
お伝えしました。
かなり広範囲で膿がたまっているようでした。
私がマッサージしても乳首から膿は一滴も出ず。
炎症所見も強かったのであまり触りませんでした。
炎症を起こしているところを
強く触ったりマッサージすると
ママが痛いのはもちろん、
乳腺炎が悪化する場合があります。
ケガしているところをもみほぐすのと一緒です。
開業してから膿ができるほどの乳腺炎の方が来られるのは
年に2〜3人でしょうか。
とても稀なのですが、怖いことです。
化膿性乳腺炎を放置すると
敗血症（菌が全身にまわって）になり
命を落とすこともあることを忘れないでください。
Oさんは受診した乳腺外科で切開して膿を出し
抗生剤の点滴や患部の洗浄が必要で
しばらく通院しなければいけなくなったとのこと。
こうなると完治までまたしばらく時間がかかります。
「しこりがあります」
「赤く腫れて痛いです」
「熱があります」
ご予約の際にそう言われることは多いのですが
「予約は来週でもいいです」と言われると
私が怖いので
なるべく早く来てもらうように調整します。
必要と判断した場合は時間外の受診もすすめます。
乳腺炎の原因は、
先ほど話したように
授乳間隔があいたり、不適切な授乳姿勢で飲み残しがあったり、
長時間の圧迫（だっこひもやきつめのブラジャー）などもありますが
"ママが疲れている"ことが圧倒的に多いです。
来院されたOさんも
サポートが少なく、産後すぐから自宅で
はじめての育児を一生懸命に頑張っていました。
赤ちゃんは上手におっぱいを飲んでくれて
授乳姿勢も問題なく。
ニコニコとご機嫌で、
大事に育ててもらったのがよく分かりました。
しかしママが疲れていると乳腺炎もなかなか治りません。
今は、おっぱいが回復するように
体力をつけることが最優先です。
周りの人を巻き込んで
どうか休息をとることに専念してください。
授乳しているすべてのママたちへ。
しこりができたな、と思ったら授乳を頻回にして
搾乳して、とりあえず母乳を出すことを意識してください。
あたたかい飲み物をたくさんとって、
消化の良い食事にしてください。
肩、背中のストレッチをして血流を良くしてください。
それでも改善しなければ、
様子を見ずに、早めにマッサージにきてください。
そのときのおっぱいの状態をみて
必要なら産婦人科で薬を処方してもらったり
今回のように乳腺外科の受診をすすめます。
一番、そうではないと思いたいのですが
しこりがなかなかとれないと思っていたら
"乳がん"である場合も。
授乳中でも乳がんになることがあります。
「このままで大丈夫かな？」と
不安があれば
いつでも来院してくださいね。
息子はさっそく保育園の洗礼を受けてますが…🥶
月〜金曜日の午前中のみ営業しています。
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